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月の虜

第11章 貴女に着物を贈る意味ー石切丸ー(裏)


ー石切丸ー

主の元へ行こうと廊下を歩いていたら、鶴丸さんの声が聞こえた。

鶴丸「…だが、俺だって君を……。」

胸がザワついた。
分かっているつもりだったが、目の当たりにするとこんなにも掻き乱される。

燭台切「おーい、鶴さーん!」

…部屋に戻ろう。
少し落ち着かなくては。

あのまま…
燭台切さんが呼ばなかったら、どうなっていたのだろう。
主は鶴丸さんに応えた?

不安に押しつぶされそうだ、
山姥切さんや三日月さんの言葉に勇気をもらったが、やはり怖い。
想いを伝え、受け入れられなかったら…
あの笑顔をもう、見る事は出来なくなるのでは?
今の関係が崩れてしまうのでは?

三日月「では、主が他の者と共にいるのを指を咥えて見ているか?」

「Σ三日月さんっ!」

…いつの間に。

三日月「想いを告げねば、同じ土俵には立てぬぞ。」

ー!!

そうだ…
私は鶴丸さんを嫉妬する資格はない。
何もせずに怖気ずいているのに。

今剣「三日月さーん!着替えたら、行きましょう!!」

三日月「あい、わかった。」

「三日月さんっ!」

三日月「…しっかり、な。」

そう言い残して、三日月さんは去った。
…不甲斐ない。
背中を押してもらったのに、ウジウジと。

今日の為に用意した浴衣一式を胸に抱き、部屋を出ようと障子を開けたら…

『Σ!!』

「あ、主!?」

そこに、主が立っていた。

『驚いた…声をかけようとしたら、急に開くんだもの。』

「すまない…大丈夫だったかな?」

『うん。出かける所だった?』

「いや…主こそ、何か用かい?」

『渡したいものがあってね。
部屋に入ってもいい?』

「もちろん、どうぞ。」

渡りに船、とはこの事だね。
抱えていた浴衣を部屋の隅に置き、主を通した。

『これを、石切丸に。』

これは…浴衣?

『今日は秋祭りだから、みんなに作ったの。
良かったらこれを着て、お祭りを楽しんで来てね。』

主が…作ってくれた?
いや、みんなにと言っていたがそれでも嬉しい。

「忙しい中で良く作れたね。」

『簡単な物から始めて、だんだんと慣れて来て早く作れるようになったよ。』

そうだね、主は努力を怠らないし器用だから。
想いを込めて、作ってくれたのがわかるよ。

「…ありがとう、主。とても嬉しい。」

『良かった。それじゃ、失礼するね。』



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