第10章 素直になるとー和泉守兼定ー
加州「主ー、大丈夫ー?」
満足したのか、和泉守が執務室を出て少し経つと近侍の加州がお茶とお菓子を持って来てくれた。
『ありがとう。
…もしかして、執務室に来てくれちゃった?
その…。』
加州「まぁね。
主が声を抑えても、和泉守の攻める声と音がねぇ。」
『/////申し訳ありません。』
加州「別にー?
恋仲なんだし、いいんじゃない?
ていうか、和泉守が勝手に盛ってるんでしょ。」
盛ってるって…
加州「みんな、わかってるし。
主はちゃんと、俺たちも愛してくれてるって。
主は節度を持とうとしている事も。
過去の主を亡くしている俺たちは、少なからず愛される事に執着があるから突っぱねないでくれてるって。
風紀を乱してんのは、和泉守だけ。」
風紀…
『…怒った方がいいのかな?
主命で仕事中は禁止にする?
それとも、力技で…。』
加州「ストップ、ストップ!!
力技は駄目だって!
主、自分の霊力わかってる?
和泉守、逝っちゃうよ!」
『さすがに、そこまではしないって…。』
一時動けなくするとか、執務中は部屋に入れなくするとかのつもりだったんだけど。
私、そんな危険人物認定されてるの?
加州「ていうかさ、何でこうなったの?」
心配してくれている加州に、さっきのやりとりを話す。
加州「あー、そりゃ怒るわ。
俺も怒りたいくらい。」
『Σえっ!!』
加州「主は自己評価、低すぎ。
言っとくけどさ。
主はね、全部がハイスペックだからね?
俺にしてみれば、何で和泉守を選んだのかが不思議なくらいだよ。」
『そんな事は…。』
加州「あるの。
和泉守だけじゃなく、俺たちみんながこんなに慕っているのにさぁ。」
ツツ…と、加州のしなやかな指が首筋を滑る。
『ちょっ…加州っ。』
加州「へー…感じやすいんだね。」
加州がゆっくりと近づいて来る。
ったく、なんだって刀剣は無駄に色気があるの?
『ストップ。』
と、近づいてきた加州の唇を手で押さえた。
加州「むぐっ。」
『おいたがすぎるんじゃないかな?』
加州「いててっ!」
私に触れている手の甲をつねってやった。
加州「酷いなぁ。」
『酷くない。
さ、仕事に戻るよ。』
加州「はーい。」
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