第1章 再会ー石切丸ー (裏)
「失礼するよ。」
『どうぞ。』
部屋へ入ると、の香りで満たされていた。
初めて入る訳ではないが、夜にこうして訪れると違って感じる。
「燭台切さんがツマミを分けてくれたよ。」
『おー、嬉しいね。』
「そうだね。では、乾杯。」
カチン。
グラスを合わせ、ゆっくりと始める。
『こうして呑むのは、初めてだね。』
「そうだね。」
『…巫女だった頃には、想像もできなかった。
こうして石切丸と話したり、呑んだり…触れられるなんて。』
と、は私の手をとった。
おっと…
これは、嬉しい誤算だ。
いつ切り出そうかと思っていたが、の方からチャンスをくれた。
私はの手を握り、真っ直ぐに向き合う。
「主…いや、。
私のモノになってくれないか?」
『石切丸…。』
「私は刀であった時からずっと、に…に焦がれていた。
もっと…触れてもいいだろうか?」
『…もちろん。
私もそれを望んでる。』
「…ありがとう。」
そっと手を引き、抱き寄せる。
やっと…
こうして想いを交わす事が出来るのか…
「…口づけをしても?」
『…ん。』
の頬に手を添えると、静かに目を閉じた。
あぁ…なんて愛しいんだ。
唇をそっとなぞり、重ね合わせる。
柔らかくて、甘くて、食べてしまいたくなるな。
ペロッと舌でなぞると、の唇が少し開いた。
その隙を逃さずに、口内に舌を差し込む。
『んんっ…。』
鼻から抜ける声までか甘いなんて…
唇を離しの顔を見ると、少し潤んだ瞳で私を見上げた。
「…。」
『…もう、その名で呼ばれる事は無いと思ってた。
嬉しい、石切丸に呼んでもらえて。』
「いいのかい?私が真名をもらっても。」
『…誰にも教えるつもりはなかった。
…石切丸以外には。』
「…の全てを、私にくれるのか?」
『もらって…くれますか?』
「喜んで。では、私の全てを。
貴女に捧げよう。」
結界を張り、何も邪魔できないようにする。
まだ、夜は長い。
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