第9章 ただ、君をー鶴丸国永ー (裏)
まぁ…
それ以前に、主は想う相手がいるのか?
俺は主にとって、どんな存在なんだろう…
やる事を終えた俺はまた、執務室へと向かった。
部屋の掃除でもしているのか、入口が空いている。
気配を殺し、そっと覗いてみると…
「!!」
手紙を読みながら、見た事のない柔らかな笑みを浮かべているじゃないか。
その姿を見て、確信した。
…主には思う相手が居る、と。
俺は声もかけず、そのまま引き返した。
自室に戻り、ゴロリと寝転ぶ。
あんな主…初めて見た。
慈愛に満ちた笑み…綺麗だったな。
相手が羨ましい。
ーようこそ、私の本丸へー
ー鶴丸!穴を掘らないでっ!!ー
ーすぐ、手当てするからねー
笑顔も…怒った顔も…泣きそうな顔も…
全てが愛しい。
大好きなんだ。
主の全てが。
ー諦めるのか?ー
伽羅坊の言葉が響く。
…諦められるくらいなら、初めから惚れてなんかいない。
そんな覚悟で主に想いを寄せるか。
そうだ…そうなんだよな…
こんな所でウジウジしているのは、性に合わん。
「主ー。」
『んー?どうしたの?鶴丸。』
自然な仕草で、手紙を伏せる。
真っ白な上等な和紙…
なかなか、雅な奴じゃないか。
『鶴丸?』
「…妬けるな。」
『えっ?』
「その手紙の相手に、だ。
さっき、それを読んでる時の表情が見えた。
…そりゃぁ、愛しいって顔してたぜ。」
『/////。』
ほら、その顔だ。
俺に向けられたいのに、向けられない。
何故…俺じゃない?
『…鶴丸。』
気づくと主が目の前に来ていて、俺の頬にそっと触れる。
『…泣かないで。』
そう言うと、主が俺に口づけた。
えっ!?
これは、現実か!?
ていうか俺、泣いてんの?
柔らかな唇が離れると、あの愛おしい表情で俺を見つめ…
白く細い指で、俺の涙をそっと拭ってくれた。
あんなにも焦がれたものが、真っ直ぐに俺を見てくれている。
『自分に妬くなんて…おかしな人。』
自分に妬く!?
…駄目だ、さっきから疑問ばかりで頭が混乱している。
『揶揄いながらも冷静に見ている鶴丸も、自分の事になるとそうはいかないのね。』
「ちょ、待ってくれ。どう言う事なんだ?」
思考が全く機能していないぞ。
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