• テキストサイズ

月の虜

第8章 艶酔ー三日月宗近ー (裏)


『さて、と。
どうしたものかなぁ…。』

見習いを下がらせ、2人きりになると身体を背もたれに預け、額に手を当てた。

三日月「どうした?」

『…気づいてるでしょ。
私が見習いを持て余しているって。』

三日月「あぁ、そのようだな。」

『自分の時は、研修先の近侍が本丸の事は教えてくれたの。
宗近は…。』

三日月「長谷部が向いているのではないか?」

『…だよね。』

それこそ、分かっているだろ?
俺が主…以外にこんな事をしないと。

『長谷部に特別手当てを考えないとな。』

三日月「まだ、始まってもいないのにか?」

『なんか、苦労しそうなのが想像できて。』

確かに。
だか、長谷部ならば上手くやるだろう。
なんだかんだ言って面倒見はいいし、本丸内の事を網羅している。

『ひと月だ、ひと月。』

自分に言い聞かせるように、拳をぐっと握りしめる主だった。


翌日から、主は有言実行した。
見習いを長谷部に押し付けたのだ。
まぁ、長谷部も勘がいい奴だから主の本音を理解して執務室へは向かないようにしている。

が。
何かにつけて、見習いは主に寄ってくる。
食事時や八つ時、夕食後の自由時間など。
主も研修についての質問とあれば、無碍に断ることもできず。
暑苦しくまとわりついて来る見習いを持て余していた。

そんなやり取りを繰り返し、三週間が過ぎた。
いよいよ、主が直接指導する項目しか残っておらず、観念して執務室での研修が始まった。

見習い「様、これは…。」

『こちらを用いて……。』

どうしても、2人の距離が近くなる。
も今は教えていると言うことに集中しているようで、気にしていないようだ。

…ふむ、これはなかなかに面白くない。
後七日…そう思い耐えようと思ったが、持つだろうか。

見習い「……。」

その時の俺は、己のことに気を取られ過ぎていた。
見習いが何か企んでいた事に気づきませずに。

三日月「主よ、では行ってくる。」

今日は遠征へ行く。
…本当は行きたくないのだがなぁ。

三日月「補佐は長谷部に頼んである。」

『わかりました。…ご安全に。』

そう言い、部隊に加護のまじないをかけてくれた。
の加護に包まれ、暖かな気持ちで旅立った。

…後ろに控えていた見習いが睨んでいたのが気がかりだが。



/ 110ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp