第8章 艶酔ー三日月宗近ー (裏)
見習い「三日月宗近が近侍なのですか?」
『えぇ。』
見習い「あまり、近侍をやらない刀剣だと聞いていたのですが。」
『他はわかりませんが、私の近侍は三日月宗近です。』
見習い「さすが、様ですね!」
『何がです?』
見習い「様は大変優秀な方だと聞いております。
きっと、三日月宗近も認めていらっしゃるのでしょうね!」
そこは合っている。
が。
奴の視線に熱を感じる。
は気づいている様子はない。
それに…は上手く隠しているが、俺にはわかる。
見習いが苦手なのだ。
あまりガツガツ来られるのを嫌うからなぁ。
刀剣相手ならそんな事はないようだが、対人間となるとあまり近くに来られたくないのだ。
だから、今日は長谷部に押し付けたのに見習いは執務室へ来た。
残りの日々が、今から思いやられる。
見習い「今は何をなさっているのですか?」
『報告書の作成です。
あ、そのままで。
今回のは刀剣の事が細かく記されているので、お見せできません。
これは人も同じですが、プライバシーなどの守秘義務も当然あるのです。
どこから漏れて、弱点を突かれるかわかりません。
刀剣を守る事が、審神者の大切な任でもあるのです。
ですので、次からはお呼びした時にいらして下さいね。』
やんわりと釘を刺したな。
俺たちの事は何も疑わないし、全てを曝け出してくれているがはあまり人を信用していない。
そして、歴史を守る事よりも俺たちを守ろうとしてくれる。
その事を知られ、後々脅されたり政府へ報告されるのが面倒なのだろう。
…だったら、断れば良いものを。
見習い「わかりました、気をつけます。」
『…宗近、これなのですが。』
三日月「どれ?」
に呼ばれ、背後から包み込むようにして書類を確認する。
それを見た見習いの眉が少し動いた。
見習い「…刀剣と仲がよろしいのですね。」
『…私は刀剣も人も区別していません。』
見習い「あ…。」
の声が低くなる。
刀剣を軽んじる事を嫌うの琴線に触れたな。
ヤキモチが仇となったか。
三日月「ふむ、この件ならば和泉守に確認するといい。」
『和泉守が担当したのでしたね。
ありがとう、宗近。』
話を逸らし、見習いから俺へと気持ちを向けさせる。
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