第8章 艶酔ー三日月宗近ー (裏)
ー三日月宗近ー
三日月「審神者研修?」
『そう。審神者見習いを受け入れて、研修を受けさせるんだって。』
三日月「主がか?」
『うん、依頼が来たの。』
三日月「どれ…。」
ふむ。
確かに、見習いに教育せよとあるな。
主は優秀だから、うってつけだろうが…
三日月「男の見習いか。」
『ひと月ほど泊まり込みで研修させるんだとさ。』
やれやれ、といった感じで主は言うが…
俺は心配でならない。
我等の主は、ひとことで言うと“美しい”のだ。
刀として長く生きて来た俺たちがそう思い、惹かれている。
(不本意ながら、俺以外も)
それなのに、人の青臭い男など…
三日月「断れぬのか?」
『研修を受けた身としては…ねぇ。
断ったら、恩を仇で返すようなものだし。』
乗り気ではないが、義理堅い主は断れぬだろう。
俺たちでしっかりと守るしかない、か。
三日月「しっかりと指導してやれ。」
『だね。』
主は相当厳しい修行を強いられて来たらしい。
なんでも、力が強いから期待されていたようだ。
『まぁ、私は厳しくというよりはきっちりかな。』
三日月「主の思うようにやれば、間違い無いだろう。」
『ありがとう、宗近。
いろいろと協力してね。』
三日月「任せておけ。」
きっちりと、護ってやる。
何があっても、な。
そして…
研修者を受け入れる日が来た。
見習い「よろしくお願いしますっ!」
なんとも、暑苦しいのが来たものだな。
『私が当本丸の審神者・と申します。
今日は本丸内の見学と、身辺の整理をして下さい。
長谷部。』
長谷部「はい。
私がご案内いたします。」
見習い「はいっ!」
…悪い奴ではなさそうだが。
主を見て、頬を染めたのは見逃さぬぞ。
『さて。
今日は長谷部に任せて、仕事しますか。』
三日月「そうだな。」
主と二人で執務室にいると…
見習い「失礼します。」
『?どうかしましたか?』
見習い「案内をしてもらい、荷物の整理も終わったので見学させてください。」
『そうですか。
では、そちらにお座りください。
宗近、長谷部を呼んでお相手してもらって。』
三日月「わかった。」
断ればいいものを。
仕事中に声をかけられて集中が切れるのが嫌なのくせに。
まったく、優しいヤツだ。
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