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月の虜

第5章 重なる想いー髭切ー (裏)


小狐丸「まるで、姉や母のように。」

簡単に想像できるな、その姿は。

長谷部「…俺は一度、無神経な事を聞いてしまったんだ。」

「どんな事だい?」

長谷部が言うには、自分の子供は欲しくないのか?と聞いてしまった事だ。
審神者になると、引退しないと叶わぬ事らしい。
それは、この本丸の男士・誰一人として望んでいないのを主は知っているから…

長谷部「…あんな辛いお顔は、二度と見たくないな。」

我々を置いて、自分の望みだけを叶える主ではないからなぁ。

三日月「その分、我らでできる事をしてやろうと思っている。」

「…そうだね。」

なんだろう…
胸がざわつく。

主は…審神者になる前。
子供が欲しいと思った相手が居たのだろうか。
居たとしたらその男は…どんな風に主に触れ、囁きかけたのだろうか。

『えー?そんな事を聞いて、どうするの?』

翌日、執務室へ押しかけて聞いてみた。
一晩たっても、胸のざわつきが治らなくて。

「…どうしても、気になってね。」

『そっか…
そうね…そこまで想った人には出会えなかったかな。
だから、審神者になったんだし。』

「そう…じゃあ、今は?」

『今!?
今は…想っても叶わないからなぁ。』

「どう言う事?」

『神様相手じゃ、無理でしょ。』

つまり…

「僕達の中に、想う相手が居るって事?」

『あ…。』

しまった、という顔をしてる。
図星ってこと、か。

『もう、この話は終わりっ!
髭切も仕事に戻って。
長谷部ー!書類を手伝ってー!』

長谷部「かしこまりました。」

これ以上は話さない、という感じで部屋を出された。
なんだか、さっきよりも胸がざわつく。

それから僕は、主の様子を観察した。
主が思う相手は誰なのか、知りたくて。

でも、誰に対しても態度が変わらないから分からない。
すでに想いが通じているから、なのか?

…ダメだ、気持ちが晴れない。
誰なんだろう…主の心を占めているのは。

諦めるにしても、相手を知らないと諦めきれない。

真面目に聞いたら、話してくれるだろうか。

「主、話したい事があるんだけど。
今夜、いいかな?」

『…わかった。
じゃ、全部終わったら自室においで。』

「うん。」

さて、覚悟を決めようか。



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