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月の虜

第5章 重なる想いー髭切ー (裏)


店主「ありがとうございました。また、ご贔屓に。」

『えぇ、また来ますね。』

少し話をし、目的が済むと次の店へ。
主の行先はいつも決まっているようで、どの店でも店主や店員と打ち解けている。
ここでも、分け隔てなく接しているんだね。
…なんだか、安心する。

次の店へ向かう為に外へ出ると…


どんっ!!

『おっと。』

主に小さな子供がぶつかった。

『痛い所はない?怪我、してない?』

子供「うん…あの…ごめんなさい。」

『私も、ごめんね。
…飴が落ちてしまったね。』

子供「あ…。」

ぶつかった時に落としてしまったのか。

『一人で来ていたの?』

子供「うん…。」

『えらいね。
ぶつかった時も、ごめんしてくれたし。
じゃ、私と飴を買いに行こうか。』

子供「でも、お金…ない。」

『私にぶつかって落としてしまったのだから、私に買わせてくれるかな?』

子供「…いいの?」

『うん!じゃ、行こうか。』

子供「うんっ!」

『髭切、いいかな?』

「どこへでもお供するよ。」

ずっと子供と目線を合わせて話していたが、立ち上がって手を繋いで飴屋へと歩き出した。

初めて、主が本丸にいる者以外と接する所を見た。
僕達と接するのに変わらない。
でも、子供にはもっと優しく感じる。
いつもよりも、穏やかで温かい。

子供「ありがとう、お姉さん!」

『気をつけて。また、会えるといいね。』

子供「うん!ばいばいっ!!」

子供と別れ、残りの用事を済ませに行く時。
主の空いている手を取った。

『髭切?』

「僕も繋ぎたくなった。いいかな?」

『…うん。』

そのまま手を繋いで買い物をし、本丸に着いてから離した。

『ありがとう、髭切。
でも、髭切は何も買わなかったね。』

「目当ての物がなかったからね。」

買い物以上に、素敵な事があったから。
僕はそれで満足だよ。

主と別れて、自室に戻る途中。
広間で寛いでいた長谷部・鶯丸・三日月・小狐丸・今剣に捕まった。
この本丸の古株たちだ。

長谷部「どうだった?主との買い物は。」

長谷部に問われたので、今日の出来事を話した。

今剣「主さまらしいですね。」

三日月「そうだな。主は子供が好きだから。」

「そうなのかい?」

鶯丸「あぁ。短刀が顕現すると、一緒になって遊ぶ。」



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