第16章 月食
雨「お待たせしました。」
「うん…ありがとう…。なんともない?」
雨「はい。貴女の犬は強いですよ。」
「ふふっ…知ってる。」
そういうと、桜が舞い、飾りのはずの尻尾がブンブンと振っているようにさえ見えた。
…すごい、喜んでる。
雨「さ、本丸へ帰りましょう。」
「あ、マフラー返すね。」
雨「いえ、どうかそのままで。」
「ありがとう。」
五月雨が手を差し伸べて立たせてくれると、すっと腰に手を回した。
なんだか、私の知らない五月雨江がいっぱい出て来た。
どうしよう…どんどん好きになってく。
雨「…。」
あれ?
腰に回った五月雨の手に力が入った。
「どうかした?」
雨「頭。刀紋をつけると…その、気持ちが伝わりやすくなるのです。特に好意が。」
「えっ。」
そいういのは、先に言ってよぉ!!
えっ?ちょっと待って??
じゃ、ほんのり好きだと思っていた所から、しっかりと自覚した今まで。
つまり、最初っから気持ちがバレてた!?
雨「本丸に戻ってからの頭のお時間、この雨にいただけますね?」
あ、拒否権と逃げ道なし。
「…はい。」
ー五月雨・終ー