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月の虜

第16章 月食


桑名「よし、終わったよ。本丸に帰ろうか。」

「うん。」

いつの間にか私は、桑名にしがみつくように抱きついていた。

桑名「…怖かったよね。よく一人で頑張った。」

「桑名が助けに来てくれた。」

桑名「当然でしょ?僕の大切な人なんだから。」

それは、私が主だからという意味だよね。
そう思っていても口には出せなかった。
肯定されるのが怖い。

桑名「ただいまー。」

豊前「おけーり、桑。」

松井「主、無事でよかった。」

「ありがとう。心配かけたよね。」

桑名「話は明日でいいでしょ。お風呂に入ろう。」

「え?ちょっと、桑名っ!!」

本丸に着いたのに私を抱えたままで、私の私室がある離れへと進む。

桑名「篭手切にお風呂の準備を頼んでおいたんだ。主、泥だらけだよ。」

「いや、それはありがとう。もう、降ろしてくれていいんだけど。」

桑名「どうして?僕も一緒に入るんだから、問題ないでしょ?」

問題しかないが?

桑名「恋人同士なんだからさ。」

「…いつから?」

桑名「主、僕の事好きでしょ?刀紋で繋がったから主の気持ち、伝わったよ。」

「嘘でしょ…。

桑名「ほんと。僕は主人としてもちろん好きだけど、おんなのひととして大好きだよ。」

「/////。」

桑名「さ!汗を流してさっぱりしようか。」

爽やかに言ってるけど、内容はさほど爽やかではないぞ。

そして、湯上がりにまた汗をかかされるのは別のお話。


ー桑名・終ー
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