第6章 足音
俺にとって、全てを捨てるということは死を意味する。
彼女が人間であり、俺が鬼で人を喰らうかぎり、
共生することなど不可能な事なのだ。
だけど、願ってしまう。
あの娘が人間のまま息絶えるまで
俺の一番近くで
目の届くところで笑っていて欲しいと...
でも、あのお方は静かに言葉を発さず
俺の監視に手を抜かぬだろう。
変化の殆どが劣化だと仰るのだから
俺の近頃の心の変化を嫌うはずである。
それでも菖蒲を近くに置くならば
それを認めさせるほどの何かがなければならない
そう。
俺はこれからも強くならなければならない。
お役に立たち続けなければならないのだ。