第5章 花酔ひ
愛おしさが溢れる感情を持て余し、菖蒲は白橡色の長い髪を撫でつけた。何度も名前を呼べば、それに応えるように童磨の触れ方も愛し方も熱を持つ。
だけどもう、膝と腰がその先を強請るように揺れてしまう。意図もしないというのに。その先を言うのを願うのも、こんなに恥ずかしい自分を知られたくない。
菖蒲のそれを察して、にたりと僅かに熱を持った目を向けた。
いつの間にか帯留めも解かれ、衣擦れの音をシュルシュルと鳴らして帯ごと取り払われた。
自身の袈裟の羽織も取り落として、肉体の線を隠さぬ血垂れ模様が露になる。
「ねぇ、」
「ん?」
「あなたの........肌に、触れたい。」
ごくりと息を呑む音がした。瞳の奥、獰猛にぎらつくのに気づく。
「いいよ。」
照明で逆光になる大きな男の陰で、その体格差と肉体の彫刻に見惚れた。
童磨は上も下も性急に脱いで猿股一枚になった。晒された体はやはり美しく、無意識に手が伸びる。それを迎えるように手を引いて菖蒲に抱きしめるようにして覆いかぶさり、深く抱き合った。
「温かい。柔らかいね。菖蒲もドキドキしてくれてるのかい?」
「はい........。嬉しい...。」
ひとつ、ふたつ、口づけをおとして「もっと触れたい。」と見つめられた。その視線に耐え切れなくて顔を反らせば、撫でるような手つきで顔の向きを正される。「ダメ。」と愛おし気に耳元で囁かれて、ずくんと腹の下が疼いた。途端にぬぷりと女陰に突き立てられ、鮮烈な刺激に腰がうねり、息を吞んだ。
途端に薄く柔らかい唇が口を塞いでは、掻き回される押さえられない感覚と相まって、どうしようもなく暴れまくる快楽に身を任せて貪り合う。溶かされて溢れた蜜が腿を伝い落ちた。
男の指が奥へと入ってかき混ぜ、水音が響いて耳に届くことすら快楽を助長する刺激になる。
せり上がってくる快楽。無意識に童磨の腕を掴んでいた手で爪を立てた。
「あぁっ...あぁぁぁ」
「あぁ、可愛いね。菖蒲。俺の........」
きつく抱きしめられ、もっと欲しいという情欲と幸福感が胸を締め付ける。だけどそれだけではまだ足りないと切なく腰が揺れた。
「まだだよ。」
耳元に息が吹きかかると同時に口づけられてぐちっと音を立てて舌で弄る。甘い声が漏れると、ふふっと息で優しく笑った。