第5章 花酔ひ
頬からすべるように降りてきた手が布越しに体に触れた後、着物の合わせに沿った皮膚につぅと触れた。
無意識に体が撥ねて、潤んだ眼差しで男を見上げる。女にダメかと尋ねるように首をかしげて妖しく笑みを浮かべた。首ごと顔を背けて強く目をつむる。菖蒲の手は、促すように男の手に重ねた。
合わせを縫って潜り込んだ手が片房の柔らかい肌に触れると菖蒲は甘い息を吐いた。
「ねぇ、こっちを向いておくれよ。今、菖蒲、すごくきれいな顔をしてるから....。ほら....」
「ん...恥ずかしい....。」
撫でるように顔の向きを戻されて、菖蒲目の前の数字が刻まれた美しい瞳をおそるおそる見上げた。
童磨の大きな手で包みこむ胸の先端を指先で摘まんでこね回す。
ぴりりと強い甘い痺れが首の筋を駆け抜け、甘く上ずった声が溢れた。
ぴくりと仰け反るように動いた体はその先の快楽を求めて呼吸による胸の上下が浅くなる。
情欲に染めた獣の目に見つめられ、体に触れていた手が菖蒲の手首をつかんで、強靭で分厚い胸板へと掌が当てられる。
「俺の心音、感じるかい?こんなにも、俺の身体が反応するかわいい声は、君にしか出せないんだよ?」
好奇心と欲情に染まる吐息混じりな声が、羞恥心を煽る言葉をもって耳元で囁かれる。
「そんな......に、言わないで....」
器用にすべるようになだらかな動きで、片方ずつ肩が晒される。袖を抜かせてくれないから身動きが取れない。
もぞもぞ身じろぎしながらも、腕は押さえつけられて首筋をぬらりと尖った舌が這いながから下に降りていく。
両方露になった柔らかい女のふくらみをまわすように撫でて与えられる。与えられる感覚に膨らむ情欲。菖蒲は羞恥心に顔を背け手の甲で口元を隠しながらも、甘く熱い息を吐きながら物欲しそうに身をよじった。
「そちらを向いてはいけないよ。可愛い顔をずっと見せておくれ。」
背中にたわんだ残り布を、肌を撫でて抱くようにどかされ、それを促すように腰を浮かす。着物の裾の合わせから足を割って入ってきた膝、胸の先端に触れる唇、ひとつひとつの現実が夢のように甘く理性を溶かしていく。