第3章 風変わりな思考
正直霧滝様がそこまで考えたうえで、童磨様と接していらっしゃるなど思いもよりませんでした。
親兄弟を殺されてはわたしなら、彼女のように思えるか分からなかったから。
確かに、童磨様は人を喰らう寸前までは神の様に優しく信者様と接していらっしゃいます。
そして、童磨様が人を喰らうことを知っている(知ってしまった)若い女性は、美しい童磨様に食べられることを望んで信者の相談の場で志願するところも何度か聞いてしまったことがあるのです。
そして、御心が美しい信者は男女問わず幹部に召し上げ、その方が生を全うするまで側に置かれます。
正直に申しまして、霧滝様は少し他の人間たちと感覚は違うようですが、やはり御心は美しく、童磨様が好まれるようなお方です。
「都合がいいなどとは思うておりません。わたしも思っているところは同じでございます。
わたしは、実を申しますと、童磨様には恩義で尽くしております。妄信しているわけではないのです。
21の年の頃、わたしは身ごもった状態で雪山に捨てられていたところを助けていただき、お腹の子は助からなかったのですが、丁重に供養していただきました。
以来、彼のお世話をさせていただいております。」
普段あまり言わない身の上話をしたくなったのも、霧滝様に聞いて欲しいと思ったから。
きっとわたしのことも感じることがお上手なのでしょう。
胸の内を理解してくれて、その人自身を見てくれるような優しい子。
霧滝様は慌てて
「申し訳ございません。何か悲しいことを思い出させてしまったみたいで…。」
と言ってくださいました。
「いいえ、あなただから聞いて欲しいと思ったのです。」
と返すと、少しわかっていない顔をされました。
謙虚なのでしょうね。
わたしは彼女をもっと好きになりました。