第3章 風変わりな思考
「霧滝様、童磨様が鬼で在らされることはいつお気づきに?」
唐突で直球的な質問に戸惑った。
だけど質問された松乃さんは、相も変わらずニコニコされたまま。
「わたしが、なぜそれを知っているのと思われたのです?
そして、もし知らなかったら....。」
「童磨様の話される内容がそれを確定させるものでしたので。間違いないと思っておりました。
霧滝様は、それでも怖いと思っていらっしゃる様子がございません。
一度お話してみたいと先日から思っていたのでございます。
童磨様が仰るように、あなた様は綺麗な心でいらっしゃるからこそ、周囲の者のようすに憂いていらっしゃる。
そんなあなた様がなぜ人を食う鬼と知りながら、童磨様を?」
「何故でしょう。人を喰らうのは鬼という生き物が人しか食べられぬのが自然。
普通の我々人間が食すものは彼らは受け付けぬと解っているからでしょうか。
わたしも、幼いころ、家族を食い殺されましたが、憎いのはそういう生物を生み出している者、生み出して操っている者です。」
「確かにそうでございますね。
しかし、ご家族を亡くされても、その元凶である鬼全体を恨まないと.....。」
「はい。確かに人の命を蝕む存在は悪でしょう。しかし、理性がしっかりとした鬼は、人間社会にいる限り人間社会に馴染む鬼の中には、人に尽くす面を持っていらっしゃる方もいらっしゃるでしょう?」
「それが童磨様だと?」
「はい。そして童磨さんは、沢山の信者を抱えています。それは彼を鬼と解って接する方とそうでない方もいるでしょう。
しかし、彼を心の支えとしている方が多いのなら、結果食すことになっても死ぬ瞬間怖いとしても、救われて信じているその瞬間は、愛と感謝で満たされているはずです。
喰らう以外、あの方も騙したり、陥れたりはしないとなんとなくわかるのです。松乃さんは、いろいろ彼の素性や行いも全てご存じで心から笑っていらっしゃるようですし。」
松乃さんは驚いた様子で、わたしを見ていた。
わたしはきっと変わり者だから、人間なら思わない、後ろ指をさされそうな思考をしていて堂々とそれを彼女に話しているから。
「都合がいいと言われればそれまでですが....。」
少しの沈黙の後、そう付け足した。