第3章 風変わりな思考
「さぁ、遅くなってしまっては、また君に危険が及ぶだろう。
明るいうちにお行き…。」
先日の事を気にして声をかけてくれる。
「教祖さま、わたくしがお送りしてもよろしいでしょうか?
霧滝様のように若くてお美しい方はそろそろ危ない刻限でございます。
教祖様も先日の事も気にかけておいででしょうから…。」
と松乃さん。
「そうしてくれるかい?松乃。
俺も、あの男が生きてる限りは不安なのだよ…。
暗くならない内に帰っておいで…。」
「畏まりました。」
松乃さんは深々と会釈された。
正直まだ1週間も経っていない事から不安だったので嬉しい申し出。
それを、童磨さんが了承してくれたことで安心した。
松乃さんは優しく笑みを浮かべ、わたしに向き直った。
「それでは、人が多いところまでご一緒しますね。
参りましょ?」
「はい。お心遣い有り難うございます。」
松乃さんは、にこやかに頷かれる。
そして、
「童磨さん、また明後日お伺いします。本日はとても楽しゅうございました。」
自然に笑顔が出てしまうのも、彼の作戦が功を奏した証になるのかもしれない。
あまり可愛げなないのかもしれない思考だと自分でも思う。
だけど、それだけの空っぽの言葉と行動の端々には、確かに少しだけ優しい、愛おしいという感情の匂いも感じ取っていた。
「うん。何かあったら呼ぶんだよ。
俺はなんだか、君の気配と波動を感受しやすいようだ。」
最初あった時も、助けてと思ったから来てくれた。
それもあってか、その言葉が社交辞令の枠から出た現実的なものに思えてならなかった。
「ありがとうございます。」
笑顔を浮かべて細めた瞼からは、優しい虹色が見つめていた。
「霧滝様、参りましょうか。」
「はい。」
松乃さんと彼に背を向けて歩き出す。
後ろからは見えなくなるまで暖かい視線が注がれているような気がした。