第2章 虹色
童磨さんは、わたしの立場も考えてくださり、袈裟のような羽織ではなく、一般的な羽織を装っている。
鬼の気配を隠すのがお上手で、鬼が持つ匂いも気配も極めて低い。
でも、目は七色のままで外の光を取り込んでビー玉のよう。
先ほどまでは恐怖の対象の一つだったのに無害で好意を持ってくださってると解って、その人自身のものと捉えられる。
さっき聞かされた話だと、童磨さんは見た目の年齢が20歳のままらしい。
鬼になったのがその歳だったからと。
それなのに長く生きている分老成されたものが、良い意味で彼の年齢を不祥なものとしている。
その容姿が、人通りの少なく少し薄暗いところを歩いているせいで、人工の光が少なく、満月の光を受けてるせいで目を向けられずにいる。
感情が空っぽな分、色々計算された行動が的確過ぎて、さらにはその容姿に合わさって心臓に悪い。
わたし自身そんなに身長はそこそこある方なのですが、日本人離れした身長した童磨さんが時々、顔を覗いてくる。
しかも『狙って』だ
わたしにどうしろというのでしょう。
送っていただいている最中に、鬼の話をいろいろ教えられた。
童磨さんが、鬼の中でかなりの実力者であることは、匂いや、こうして人に馴染んで紛れて生活していることから感じてはいたけど、鬼の始祖様の配下で2番目にお強いという称号を、瞳に映された漢数字を見せながら知らされた。
「夜道を歩く時は俺がいたら最強の護衛だよ!!」
なんて一番にそれが言いたかったのだろう。
まぁ、そのおかげでわたしは事なきを得てる。
だから「有難うございます」とだけ返しておいた。
それでも、にこやかに話す鬼男の空っぽなはずの感情には僅かに幸せ色の優しく甘い香りを感じた。