第1章 神宮祭りの舞姫
時は明治後期のある年の瀬。
東京である踊り子が密かに人気を集めていた。
年に一度の神宮にて開催される
舞踊納めと舞踊始めとして行われる神捧舞踊祭
大晦日の日没から正月の日の出まで
一人の選ばれた踊子が躍り尽くす
この祭りにて5回も連続で選ばれた踊子が
今年も松明に照らされて妖艶に踊っていた。
齢18になる女の名前は 霧滝 菖蒲
若くして神楽舞踊の師範の資格を持つが、弟子はまだとっておらず、神社の神事、祭り、時には座敷に呼ばれて舞を踊ることが女の生業。
容姿も申し分なく、彼女の舞はその場の空気を換えるほどに神秘的で、足の先から指先、表情に至るまでの動きが繊細で情緒的。
天女、妖精そんな言葉がよく似合い見る者を引きつけ魅了する。
女の噂を聞き付けて白橡(シロツルバミ)色の長髪の男が
虹色の瞳をギラリと妖しく輝かせ彼女を見つめていた。
「俺も舞踊が好きで色んな子をみてきたけど………
あんなに優雅に神々しく踊る子なんて始めてだ……。」