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極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第15章 隠蓮慕



最新の銘仙の着物や舶来の装飾品を並べたデパートの店頭で、菖蒲がふと目を留めた透き通ったガラス玉の髪飾りを見つける。

――へぇ…。そういうのが好みなんだね?

菖蒲の好みが知れるということは、もはや、鬼の教祖としての慈悲や救済でもない、ただの男としての純粋な歓び。

菖蒲の手を引いたまま迷うなく店に入る。

「失礼するよ」
「いらっしゃいませ」
「ちょっと、童磨さん?」

手を引かれて、速足で強引に店に連れられる。
焦っていても、店員からは『微笑ましい恋人』の姿に映ったらしく「仲がよろしいのですね」と微笑まれる。

「彼女に似合うモノを出しておくれ。金は気にすることはないよ」
「ちょっと、どうなさるおつもりで?」
「松乃に頼んでいるから荷物の心配はいらないよ」
「いや…そういうわけではなくて…」

とんでもない量を買うのではないか
お金はどうするのか
いろいろと疑問が湧くというのに、菖蒲を置いてすべてが始まっていく。

「よろしく頼むよ」
「はい、お任せくださいませ!」

菖蒲の目に留まった簪と共に、彼女に合わせて着物や簪などの品定めをするよう店員に命じた。

童磨は作業を始める店員を眺めながら
満面の笑みを浮かべながら、菖蒲の耳元で囁いた。

「菖蒲ちゃん。今日はお姫様だろう?
松乃の着せ替えも楽しかったけど、プロの店員さんの着せ替えも楽しんでごらん。
一等に可愛いから、楽しみ甲斐があるっていうモノさ…」

頬を染めた様子をニッコリと笑顔を向けると、店内の一角に用意された格式張った椅子に、童磨は片肘をついて座った。

その目は、これから目の前で繰り広げられる『着せ替え』をショーを見るかのように楽しみにしているようだった。


店員は童磨の異様な美しさと、彼が纏うただならぬ雰囲気に緊張しつつも、菖蒲に似合う着物と帯などをそれぞれ5点ほど見立てて持ち込んだ。

仕切りで隔てられたそこで、数人の店員に取り囲まれ、着せ替えのショーが始まる。

「お客様は肌が白く少し上背がございますから、大きな柄がとてもお似合いになると思います」
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