第2章 虹色
その穏やかな表情を見てしまったのです。
実際に私が教祖様が鬼だと気づいたころ、仰っていたことがございます。
「俺、今まで、みんなが持つような感情をどうやって持つんだろうって不思議に思って、恋愛の真似事はしたけど、どれも感情が動いたことはないんだよね」
と。
それを知ったうえでも、あの表情を見てしまったのです。
これは応援せざるを得ません!!
そして、ご指示戴いて茶菓子など持って来客の間に向かいますと、まだいろいろ戸惑っていらっしゃる霧滝様と楽しそうな教祖様の話し声が聞こえてきます。
教祖様の事です。
感情はなくても、頭が切れる方ですし、人を動かすことも察する事にも長けている方です。
きっと思いは成就されることでしょう。
ですから、私はあえて、霧滝様の味方でいようと思うのです。
神事の一端を担われる方である霧滝様と、特定の新興宗教の教祖様であり鬼で在らされます教祖様とでは、障壁が多いでしょう。
今世、最大級に腕がなるものです!!
そして、来客の間に入ると、
「松乃の部屋に泊まればいいよ。俺はあのお方のところに行かなきゃいけないから」
と。
なんと、霧滝様は教祖様が鬼で在られることをご存じなようです。
これは後で聞かなければなりません。
ですが、流石に、霧滝様からしたら、今日であった初対面の宗教家の寺院に神職の一端を担う方が泊まられるのは気が引けるでしょう。しかも、誘い主は男性です。
「教祖様、戸締りはきちんと致しますので、どうぞ霧滝様をお送りください。
それなら、教祖様も安心なさいますでしょ?」
と提案させていただきました。
「それもそうだね!じゃぁ、後の始末はお願いするよ。
それと明後日夕刻、仕事先に出向く前に来てくれることになったんだ。
流石に舞巫女さんが、俺の寺院で信者に向けて踊るのはまずいから、友達として来てもらうことにしたから。」
流石です。教祖様!
少々強引が過ぎるのでしょうが、やれやれといった感じで問題なさそうでしたので
「それはまたお会いできるのが楽しみです。よろしければ私も見てみとうございます。」
と申しました。
「はい。これから、よろしくお願いいたします。」
笑顔が眩しいほどお美しい。
これからが楽しみです!