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極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第14章 花爛漫



逃げ場を奪うように、身体を壁に押し付けて
華奢なその体に童磨が覆いかぶさる。

見上げた視界
壁につく手と腕
見下ろしてくる熱もった鋭い眼差し

奥に届く指がかき混ぜて
せり上げてくる快感と合わさって
快楽が膨張していく

やり場がなくて
捕まる場所どころか支えるので精いっぱいなのに
力もまともに入らなくなる

「ダメ…こわい…許してぇっ…」
「ダメ。ほら、卑猥な音、いっぱい聞かせて…」

水音が激しくなる。
耳を塞ぎたくなるほどの羞恥に晒されても

視界も聴覚も快楽の熱を上げるものしか拾わない。

「ああっ!!んん”!!やっ…!!」
「嫌じゃないだろ…?抗わないで?」

激しい快楽の波が押し寄せて
抗えない苦しさに涙を流しても
深く果てるまで許してはくれず
とうとう腰が苦し紛れに反って潮を吐く

「ああああっあああっ…!」

視界の意識も白んで
痴態を恥じる余裕もない
はくはくと動く唇に軽く口づけ頭を撫でながら

「あぁ、嬉しいな…。そんなに爆ぜてしまうなんて…
ねぇ、もう、いいよね?」

陰る顔の双眼は鋭く熱い眼差しを向けたまま
弧を描く口元に犬歯がギラりと月明りを反射させた

「もっと、深く堕ちてよ…」
「引き返すことが出来ないのはお互い様だろう?」

滾る熱を孕んだ杭が打ち沈められる。

「あああっ……!」

反りかえった頸に、あの日、己がつけた刃の痕。
それが仄かに桜色に色づいていたのを
焚きあがる快楽の狭間に視界の端で見つけた。

喰らいたくなる衝動
でも、殺したくはない
だが、また、そこを喰らい
菖蒲の全ての味を知り
この身に刻みたい

情動を抑えることを放棄して
そこに喰らいつく

「う”うっ…」

皮膚を突き破る感覚は
欲情の渦に呑まれた躰では
ただの快楽を助長するものに過ぎない。

そして、命の危機と同時に
それが奪われないことを知る故の陶酔に浸る。

血を吸われる感覚
物理的にも先にこの体の中で命を落とした者たちと
同じ場所に体の一部が流れて血肉となる瞬間

殺してはくれないと知っていたからこその
痛みの享受
愛の証

与えられる律動
血管に食い込む刃
吸血の感覚

「童磨…」

「童磨…」

切なげに呼ぶ声が、童磨に滾る熱にくべられる。
同化したい
だが、それは即ち振り回される甘い感情の暴走とは
永遠の別れである。
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