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極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第14章 花爛漫



「菖蒲ちゃんがいてくれる空間ならば、『極楽浄土』と呼ばれる魂の遊び場と同じように思うんだ。

だが、いなければそれは無間地獄のように何もない無限の虚無の中で、苦しみを伴う」

心の吐露が、わたしを甘く蝕んでいくようで
浸食した傷に、また甘い蜜が染みわたり満たして溢れていく。

決して虚偽ではない。
「これはなに?」と名のない感情に知っている言葉を当てはめていくその行為は、今まで感じたことがない感情に慣れていない証拠。

『感情を知らない』というあなたが
赤裸々に理解できないように語られる。
それはもう、正真正銘の愛の証拠。
あなたが初めて誰かに向けた感情で
わたしに向けられたもの

じわじわと溢れてくる涙が止められない。

「おや?何で泣くんだい?」

少し動揺するような瞳の揺らぎ。
不思議そうに顔を覗くのは、やはりどこか子どものよう。
だけど…

「暖かいの…」
「暖かいと泣くのかい?」
「わから…ない…」

親指が涙をぬぐっても溢れてしまうわたしの事も
子をあやすような面持ちで見ているよう。

同じようにあなたの頬を包むと
額をつけられて息のかかる距離で目を細めて見つめてくる。

「解っているだろう?…言葉にして、教えて?」

心の奥を探るような
期待する言葉を待つ暖かくも鋭い眼差し。

自分の心に素直になる度に
また認めたくない沼が広がって
そこをまたこじ開けようとする

突き進めば地獄だとわかっていても、後戻りもできない。
なのにまた、背けていた真実をこの口から引き出そうとする。

だから、道連れに…。

「わたしに、『極楽浄土』を感じてくださるなら、
ずっと囚われてください…」

言葉や一緒に居た時間が呪いとなったならば、
わたしがいつか死んで、忘れられても
その身体は忘れることが出来ないと信じて…

無垢な笑みは、深い歓喜によって歪み、
口角の先に鋭い犬歯が光り
瞳孔が小さくなる。

「俺を牢獄に閉じ込められるのは君だけかもしれないね…」

囚われるのはお互い様。
壁に縫われるように押さえつけられて、
飢えた獣のように唇を奪われる。

致死量の血濡れた愛が注がれて
心臓が悲鳴を上げるようだった。
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