第14章 花爛漫
新しい感情。
誇らしいという言葉が、今のこの状態なのだろうか。
それは、一滴の情念を施して咲き誇る花を皆が
美しいやら
綺麗やら
目を離せず見守る状況が
堪らなく優越感を与えてくる。
あの日、初めて見た君の舞は、溢れんばかりの感情と祈りというものを俺に美しいと思わせて、それ以降、胸を掴まれたまま。
何と心地よいのだろう。
何度も何度も苦しいという感情も疼くというのに…。
用意された離れに向かう途中、同じく離れに向かおうとしていたのか菖蒲と鉢合わせる。
「おやおや…、もうよかったのかい?
もう少しは待てたのになぁ…」
ここで落ち合うとは思っていなかったのか、驚きの表情で見上げていた。
まだ、自身の中の興奮とやらが冷めないのかな?
じょじょに顔が赤くなっていく。
早く逢いたいという想いならば、心は同じなのだろうか…
「おいで…」
両手を広げて促せば、何の迷いもなく飛び込んでくる。
満たされるのは支配欲ではなく
驚きを伴ったもっと暖かい何かだったのは予想外で
恐らくそれが『愛おしい』という想いなのだろう。
そっと、顔を覗きこもうと頬に触れると
潤んで見開かれた目。
_______暖かい
菖蒲の姿を黒い袖で隠すように抱きしめて
深く深く口づける。
従順に受け入れるそれは、他者から見るならば
神の生気を吸い取り攫うような構図で
何とも独占欲を充足させる。
「行こうか…」
小さく、頬を赤らめたまま頷く。
白く柔らかい細い腕。
芸は達者でも、戦わないから、きっと脆い。
大切に扱わねば…。
再び桜を纏った強い風が背を押すように吹く。
造らずとも思わず笑みが込み上げる。
同時に細くて軽い、でも、大事な大事な『神の舞巫女』の装いのままの菖蒲を抱きかかえた。
この世の喧騒から切り離された
今宵誰も近寄らぬと約束された部屋へ。
ねぇ、もっと愛したい