第2章 虹色
なぜか童磨は、逃げもしないのに子供がワクワクして友人を連れていくかのように手を掴んで楽しそうに前を歩いてた。
手は爪以外本当に人間らしい手で暖かさを感じた。
「いやぁ、今日は本当についてる!
神社のお祭りで踊る君を見てさぁ、
俺、凄く感動したんだ。
夜は居場所掴めないし、昼は俺が動けないしで、
すぐは会えないなって思ってたからさ。」
これは少しだけど心から言っている感じがして、本当に心が踊っているようだった。
それに大人でわたしよりも沢山生きているはずなのにどこか子供のままで止まっているような人な気がする。
(あぁ、この人って感受性が育ってないんだ。)
と、幼い頃特殊な環境だったんだと悟る。
少しでもわたしの躍りでその心を満たせたのなら躍子として嬉しいことこの上ない。
「今日から俺の友達ね。個人的に来て貰うんだから、そうじゃないとおかしいでしょ?」
強引な申し出に若干引きつつも
断るどころか悪い気がしなかったのは、
人懐っこく矢継ぎ早に話す
架空と本音が混ざった中に
何か縋るものを探している感じが後ろ髪を引くから。
この野郎という視線を向けるも、
張り付けた笑顔は相も変わらず笑ったままだ。
手を引かれてそう立たないうちに寺院にたどり着いた。
童磨が戸を開けた瞬間に一斉に注目された。
3人ほどの信者がいたけれど、その中でわたしの姿とこの手を引かれている状況を見てとても嬉しそうな優しい顔をした女性が近づいてきた。
「教祖様、お帰りなさいませ。
どこに行かれたのかと思っていましたら、その方は、例の神楽舞踊の方ですね。」
「松乃!ごめんね。急に飛び出して。
この子もうちょっとで危ないところだったよ。」
松乃と呼ばれた女性は、その言葉から何かを悟ったようで目を見開いた。
でもそれはほんの一瞬で
「それはそれは...。ご無事で何よりでございました。」
わたしに向き直りにこやかに頭を下げた。
彼女から、得体の知れないわたしへの期待の匂いがした。