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極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第13章 花戯れ



無垢な感情への反応が、花を開くかのようで
吸い寄せられる蜜蜂のように、あなたを求めた。

先ほどまでキョトンとして、わたしのことを観察してたのに、もう、わたししか知らない眼差しが向けられて…


童磨さんの部屋に抱えられたまま急いて連れられて、布団の上に置かれると同時に教祖としての重厚な法衣と共に包まれる。

熱で高まる温度と甘い香の香り
あなたの香り

もっとほしい…

「ねぇ……っふ…」

後頭部に大きな手
冷静さを欠いた熱さに、わたしへの感情の溢れを感じて
このまま吞まれてしまいたい。
花の奥に引き込まれて捕らえられたら、もう後に引くことも忘れてしまう。

咥内の湿度も
頬にかかる息づかいも
舌のザラつきも
時々垣間見る、のぼせそうなくらいの眼差しも

全部が甘い麻薬のように、理性を脱ぎ捨てさせて
わたしの本能を肌果にする。


「童磨さ…」


言葉を紡がせてくれない彼もまた、
わたしと離れていた間は色もない世界だったのかな…
性急に解かれる帯
荒い息遣いと口づけ

体を溶かすような甘ったるい毒熱に犯されて
直に肌を這う手に懐柔されていく。


二人を隔てる布を取り去り、互いの温度で溶かし合う

人としては長い間、虚無の感情をいいわけ誤魔化して
疲弊と枯渇に喘いで
今、この瞬間に互いに注ぎ合い求め合うモノのみが
互いを満たす唯一の手段。


「菖蒲……」


額と額を合わせる。
重なる肌の感覚と温度
ずっと求めていたものだ。

瞳は愛の熱で潤み
俺の瞳の奥に鮮烈に焼き付ける
菖蒲の言葉に違うことなく、
俺の『存在』を余すことなく全身全霊で受け入れている。

肌の熱と触りを味わいながら頸を触れて喰む
力が抜けているそこは、
気を許している証で、鬼の犬歯など容易く通すだろう
呼吸に合わせて浮き沈みするそれを
生物ではなく尊ぶものだと本能が警鐘を鳴らす。

媚甘香纏う肌。
なんでこんなに落ち着くんだろうね。

「甘い…もっと、全身味わってあげる…」

『あげる』とはよくいったものだ。
もっともっともっとこの匂いに溺れてめちゃくちゃにしたいというのに。

あぁ…

あぁ…

なんて甘美で癖になるとわかっているのに
止める事なんてしてやれない。

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