• テキストサイズ

極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第12章 帰還と安穏



懐かしい匂いと声に涙が止まらなかった。
夢だと思ったけど、抱きしめられていっぱい撫でられて
これがただの夢じゃないことは解ったの。

でも、涙が止まらなかったのは、
ただの喜びだけじゃない。

_______ダメだった

_______迷惑をかけてしまった

_______心配かけてしまった

_______自分では何もかもできなかった



他にもドロドロな感情が詰まって苦しい。

素直に再会を喜べなくて「ただいま」が言えないのも苦しい。

久しぶりの手の感触、全部あなたはお見通しみたいで
「元気になってから考えたらいい」って言ってくれた。

童磨さんの言葉から、師範の名前や実田様のお話が出てきて、
何となくだけど、悟った気がしたの。

結局はわたしの決断が、こうしてみんなを巻き込んでしまった。

「おやおや、これは、泣き止めというのは厳しいのかな?」

まるで昨日までも逢っていたかのような「何も気にしていない」といった口ぶり。

この状況にいいわけも釈明もできずにいると、また布団の中で抱きしめられて、子どもをあやすように甘やかしてくる。

きっと、師範や実田様が童磨さんを動かした。
彼を鬼と知りながら…

わたしが、不甲斐ないばかりに、あんなことになってしまって
師範の舞も穢してしまった。

そんなわたしが
甘えていいわけがない。
甘やかされるべきじゃないのに…

やっぱり、こうされると心が落ち着いてしまうのが
悔しくて情けないのに…

熱と倦怠感には抗えず、気づけば再び目を閉じてしまっていた。



次に起きたのは、明け方頃。

松乃さんが重湯や薬を持ってくれて、眠っている間に師範と実田様が様子を見に来てくれたらしい。

「童磨様が菖蒲さんを気遣うご様子をご覧になって、安心して帰っていかれましたよ」

「また、元気になったら、先のことについてお話ししましょうと仰ってました。
必要であれば、その席を設ける手筈となっています」

わたしが知らないところで、わたしが気を病まないように動いてくれている。

まだ、いろいろ気が重くて、自分の不甲斐なさも申し訳なくてどうしようもない。
/ 193ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp