第2章 虹色
「そうなんだねぇ!
俺、童磨。
君って、もしかして正月に神宮の祭りで踊ってた子でしょ?
会ってみたかったから、俺が鬼だってこと黙っててくれて、俺の教会にも踊りに来てくれたら食べないよ?
あぁ、でも、流派の決まり事とかあるなら俺の前だけで踊ってよ。
どっちでもお金はちゃんと払うからさ。
君のところ尋ねたのは、それを直談判しに来ただけさ。
日中しかいないって近所の人言ってたからそれ以降行かなかったけど。」
あまりにも馴れ馴れしく楽しげに話してくる様子に、人間のそういう感じの男が話してくるような感覚がすることに思考がついていかず、
ましてや、自分が鬼から仕事の依頼を受けているという状況が飲み込めず思わず、目が点になっていた。
「……は?」
思わず漏らした心の声に慌てて口を両手で塞ぐ。
童磨という鬼はまだニコニコと愛想を振り撒いている。
そしてその顔のままどす黒い殺気をだして
「あとコイツ気絶させたけど食べちゃって良いよね?
君にまた襲ってきそうだし。」
と聞いてきた。
「いえ、人間の側からすると殺せといえないものです。
せめて、今回だけは……。」
「信者から聞いたけど、名前菖蒲ちゃんだよね?
男を甘く見ない方がいいよ?
こういう執着深い男は芽を摘んどかないと、また危ないことになっちゃうぜ?
まぁいいや。
そんな優しい菖蒲ちゃんのために、
今回はこうしとけばいい?」
懐から万年筆と紙を取り出して、
『次、菖蒲に手をだしたら、首を跳ねて逆さ釣りにする。死にたくなければ手をだすな。』
と書いて米澤の掌に握らせた。
「あ、有難うございます。」
「ね、今俺の事親切で鬼らしくないって思ったでしょ?」
ニコニコとまた顔を向けてくる鬼に対して最早どう対応して良いか解らなくなっていた。