第2章 出会い
義勇は無言で琴音をじっと見る。その視線にはひとかけらの隙もない。
とてもじゃないが、十五の少年の佇まいとは思えない。
「はじめまして。夜月琴音です」
琴音はぺこりと頭を下げて挨拶をする。
「…………」
「竹内たちとは仲良くさせてもらってます」
「…………」
「以後、お見知りおきを」
琴音は礼をとったが、義勇は何も言わない。
「……おい、冨岡。何か言えよ」
「何を言うんだ」
「名前とか」
「もう知っていた」
「でも、普通名乗って挨拶すんだろが。初対面なんだろ」
「…………」
ろくに喋らない義勇。
彼の思考がわからないため、琴音は「なんだコイツ」としか思えない。そして、そんな義勇の態度になぜか無性に苛ついた。
彼女もまだまだ子どもである。無理もない。
「…………いいよ、竹内。冨岡サンは私と喋りたくないんでしょ」
「い、いや、こいつ、誰にでもこうだから。別にお前にだけこんな態度とってる訳じゃなくて……おい、冨岡」
「…………」
「だからいいって。竹内、冨岡サンを紹介しに来てくれてありがとう。わかったからもういいよ。さよなら」
琴音はプイッとそっぽを向き、布団に寝転がって包まった。義勇も無言で立ち上がる。
「お、おい、お前ら」
何一つ悪いことをしていない竹内だけが、この場において最もおたおたしていた。