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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第9章 炎と水


蕎麦を食べ終わり、二人はお茶を飲む。

「意外だ」

義勇が小さく言葉を発した。

「何がだ?」
「あいつは……夜月はお前を受け入れると思っていた」
「ほう」
「あいつの中で、お前の存在は果てしなく大きい」
「それはわかっている」

杏寿郎は湯呑を見つめた。

「存在の仕方の問題だ。俺は……兄なんだろうな」
「俺も兄と呼ばれたことがある」
「あの子は失った兄のことが好きだったからな。求めてしまうのだろう」

杏寿郎は、湯呑から義勇へと視線を移した。

「冨岡。君に琴音を譲る気はない」
「既に聞いた」
「譲る気はないが、もしあの子が君のところにいくと言うのなら……」
「…………?」
「俺も付いていく!」
「来るな」

思わず突っ込みを入れる義勇。

「ははは!冗談だ!」
「…………」
「まあ、付いてはいかないが……、俺はあの子が離れていってしまっても、いつでも、どこにいても、あの子を気にしているのだろうな」
「……………」

「琴音を泣かせるんじゃないぞ」

義勇に言い聞かせるようにそう言った杏寿郎は、琴音の兄のような雰囲気をまとっていた。
しかし、その言葉に対して義勇は不思議そうな顔をした。

「? あいつは滅多に泣かないだろう」
「?? 何を言っている?」
「………?」
「???」

突然男二人、見合ったままにお互い首を傾げる。

「夜月は泣かないだろう」
「いや、琴音は泣き虫だろう」

「夜月が……泣き虫?」

杏寿郎のその発言に、義勇は信じられないといった感じでぽかんとする。そんな義勇を見て、杏寿郎も驚いた表情を見せた。

「泣き虫だろう。ついこの間も泣いていたぞ」
「その認識は、ない」
「鍛錬中も、出来なくて悔しいとすぐに泣く。まあ泣いても負けじと頑張るがな」
「泣く……、夜月が……。しくしくと泣くのか」
「いや?わんわん泣く」
「…………想像できない」
「我儘なところも多いしな」
「我儘……?そうか?」
「頑固で、拗ねるとしばらく愚図っている」
「幼い頃の話だろう」
「いや、最近もあまり変わっていない」
「……………」
「……………」

しばし黙り込む二人。義勇は少し目が泳いでいる。

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