第8章 安心感
「早く治るようにと、星に願っておいた」
「え」
「治ったら俺の家にも来い」
「鮭大根ね」
「それ以外でも。遊びに来ればいい」
「だからそれは」
「人の腕の中で寝といて、今更何を言う」
「うっ……」
「会いに来い。……俺も、たまにはお前に会いたい」
義勇がそう言った。
顔は相変わらずの無表情だが、その声は優しくて琴音の心をくすぐっていく。
「うん」
少しの戸惑いを見せながら、それでも嬉しそうに琴音が頷く。義勇は満足したかのように、彼女の肩をぽんと叩いた。
「じゃあな」
「ご武運を」
「ああ」
義勇は去っていった。
彼の後ろ姿を見つめる琴音。
『星に願っておいた』
……なにそれ
そんなことする柄じゃないでしょう
似合わなさすぎるよ
そんなことを考えながら、琴音は少し涙が出そうになった。
星になった自分の家族に、義勇が話かけてくれた。誰にも話してこなかった自分の辛さを、丸ごと受け止めてくれた気がした。
言葉の少ない彼だけど。
そこから出る優しさに、いつも驚かされる。
「ありがとう、冨岡」
琴音のその言葉が義勇に届くことはなかったが、きっとちゃんと伝わっている。何故だがそう思った。