第8章 安心感
「星空の思い出が、『家族の死』だけじゃなくなったよ」
「そうか」
「もう……怖くない…よ」
「うん」
「……ありが…とう」
琴音の体から力が抜けていく。
おい、まさか、と内心思う義勇。
こんないい雰囲気にも関わらず、琴音は義勇の腕の中で、―――寝た。
義勇は、滑り落ちてしまいそうな彼女の身体を自分に寄りかからせるような形に抱き直した。子どもをあやすみたいに抱きしめて、背中を優しくトントンと叩いてやる。彼女の寝息がすやすやと耳元で聞こえた。
こんなに近距離で彼女の温もりを感じるのは初めてだった。
「こら。男の前で無防備に寝る奴があるか」
そんな愚痴をこぼす義勇の口元は、ほんの少し笑っていた。
男に対しての警戒心も持ちつつ、それでも自分に対しては安心してくれている。そう思うと嬉しかった。
……ここまで安心されるのもどうかと思うがな
義勇は満天の星を見上げながら、しばらく屋根の上で琴音を抱きしめていた。