第1章 同期
琴音が村田たちと同期扱いになってから一ヶ月が経ち、それぞれ未熟なりに仕事に励んでいた。
この日、琴音は竹内と合同任務だった。
異能の鬼を相手に二人は苦戦を強いられたが、協力してなんとか倒した。
「はぁ、はぁ、……大丈夫?竹内」
「生きてるよ」
「ぎりぎり、だね」
「おう」
二人共、仰向けで地に倒れている。
「ゴホッ…、はぁはぁ」
「おい、大丈夫か、夜月」
「ん、たぶん」
「たぶんかよ。……どこだ、怪我」
「動いちゃ駄目。呼吸で血ぃ止めてるから大丈夫」
互いに傷が深く、疲労も重なり動けない。
それでも竹内は年少の琴音の怪我を心配して、なんとか手当をしようと起き上がろとする。
「うぎっ……いてて、」
「だから、駄目だって。竹内も怪我酷いでしょ。隠の人たちが来てくれるまでじっとしてようよ」
「お前、怪我……頭か」
「うん」
「俺を庇ったときのかよ」
「…………忘れた」
半身起こした竹内が青ざめる。
頭はまずい。下手をすると運動機能の障害など、後遺症が残りかねない。成長途中の琴音なら尚更だ。
「……死ぬなよ」
「ん、頑張るよ」
「お前を死なせたら、俺は同期の奴らに申し訳がたたねぇ」
「それは私もだよ。竹内は、足?」
「折れてるな、これ」
「他にもあちこち深手くらったでしょ」
「ああ。まあな」
竹内は起こしかけた身体を、呻き声を上げながらまた地に下ろした。
頭は下手に手を出せない領域であり、手当が出来ない。とりあえず意識を飛ばさないように己を鼓舞しながら救援を待った。
隠が駆けつけると、二人は近くの藤の花の家紋の家へと運ばれた。
それぞれ医者による手当を受け、お互いが生きていることにホッとする。
別室に別れて療養に入ることになった。
数日後、琴音の耳に知らない声が聞こえた。竹内と誰かが話している。
「だから、異能の鬼だったんだよ」
「だからなんだ」
「爪を避けたと思っても、全然違うところから攻撃が来んだって」
「それも察知できるはずだ。集中が足らない」
「……お前さ、久々に会った同期に『無事でよかった』くらい言えねえのかよ」
「…………」
「はぁ……」
琴音は廊下を隔てた反対側の部屋から聞こえてくる会話を聞き、竹内が話している相手が“冨岡義勇”なのだと推察していた。