第7章 杏寿郎の本気
杏寿郎は、義勇にずいっと顔を近づけて問う。
「冨岡。君が気にしているのは、琴音の年齢と彼女の気持ち……、それだけなのか?」
「……………」
「俺は、『君の気持ち』を聞いているのだが。俺が琴音に求婚してもいいのか、いけないのか。まあ駄目と言われても俺はするがな。どうなんだ。何か問題はあるか」
「………ない」
「そうか。わかった」
「勝手にしろ」
「うむ!勝手にする!」
「隊務に支障は出すなよ」
「当然だ!!さて、早速今夜にでも告げるかな!!ははは」
杏寿郎は笑いながら去っていった。
義勇はド直球に自分の気持を述べる杏寿郎にひたすら圧倒されていた。きっと彼女にも、それはそれは真っ直ぐに想いを伝えるのだろう。
真っ直ぐな気質の、とても良い男だ。
自分とは正反対の男。
琴音は、この男の求婚になら応えるかもしれない……
こうしてまた、俺は大切なものを失っていくのか
彼女が杏寿郎を心から慕っているのは、これまでの彼女の発言から明確である。義勇は手を握りしめて、俯くことしかできなかった。
ふぅ……と吐き出された長めのため息は、白い息となって消えていった。