第7章 杏寿郎の本気
年が明けた。
鬼に新年など全くもって関係ないため、義勇も琴音も年末年始はそれぞれ仕事をしていた。バタバタの中での年越しとなり、気が付いたら初日の出を浴びていた。
そして、義勇が任務終わりで駆けつけた年始初の柱合会議で、煉獄槇寿郎の引退と、その息子杏寿郎の炎柱就任が伝えられた。
会議終わりで杏寿郎に呼び止められる義勇。
「君が冨岡だな」
「………そうだが」
「これから、よろしく頼む!」
「ああ」
「君は、琴音とは懇意なのだろう?」
「………それなりに」
「そうか!俺は柱になったら琴音に求婚すると決めていたのだが、問題はないか?」
キュウコン?
球根?
窮困?
…………求婚…?
突然に放り投げられた爆弾発言。
疲れが蓄積されまくっている義勇の脳に届いた『キュウコン』という言葉が『求婚』と等号で結ばれたとき、それまで半開きだった義勇の目が大きく開いた。
その反応を、杏寿郎は見逃さない。
「問題、ありそうだな」
「……あいつはまだ子どもだ」
「うむ、俺も成人していない。婚約だけして、祝言は琴音が十八になるまで待つつもりだ」
「あいつの気持ちはどうなる」
「だから、それも含め、求婚をするのだ。本人がどう思っているのか、聞いてみなければわからないだろう」
「…………」
「俺は琴音を愛しく思っている。以前は妹のように感じていたが、今は一人の女性として好いている。だから、嫁にしたい」
「……………」
「父上に言われたからではない。紛れもなく俺の意思だ」
「………………」
杏寿郎は、義勇を真っ直ぐに見つめてそう言った。