第6章 薬師
「ん……、あれ……」
「起きたか」
「え?……冨岡?」
目が覚めてきた琴音は、まばたきをしながらきょろきょろと周りを見回した。
「……私、寝てた?」
「ああ」
「起こしてくれたらよかったのに」
「起こした。でも起きなかった」
「ごめん」
琴音は苦笑いを浮かべて笑う。
「寝てないのか」
「そんなこともないけど……ちょっと疲れちゃって……っ!あ、ねえ!隊士たちは?」
寝る前のことを思い出した琴音が、義勇の袖を掴みながら焦ったように聞く。義勇は俯いた。
「……………」
「………え、……まさか………」
「……二人」
「ふた…り……」
義勇の羽織を掴む琴音の手が震える。
助けたうちの二人が、死んだことを知った。
「………くっ」
「お前のせいじゃない」
「でもっ……」
「お前が生き残った七人を助けたんだ」
「でも二人死んだ」
琴音は義勇の羽織から手を離し、顔を伏せる。
おそらく重症だった二人だ。助からないだろうと頭ではわかっていた。
「全ての者を救うのは無理だ」
「……うん」
「お前のせいじゃないんだ」
「………、あ、報告書…書かなきゃ」
よろりと立ち上がる琴音。
その手を義勇が掴んで止めた。
「報告書は後でいい。治療に関しては胡蝶がまとめておくと言っていたし、戦闘時については生き残った隊士の回復を待って証言を得なければならない」
「……………うん」
琴音はまたストンと椅子の上に腰を下ろした。
義勇も、掴んだ手をそっと離す。
「悔しいなぁ……」
「……………」
「全然助けられないな、私。駄目だなぁ」
琴音は机の腕に肘を付き、手の上に頭を乗せた。