第6章 薬師
半年後。
「どうかな、しのぶちゃん」
「いいと思います。殺菌効果があるので、現場での治療に大いに役立つでしょう。ただ問題は……」
「保存法だよね。持ち運ぶなら粉状が理想だけど、そうすると、殺菌効果が薄くなる」
「塗り薬にするとしても……」
「効果が維持できないね」
琴音は蝶屋敷にいた。
新薬を前に、胡蝶しのぶと話す琴音。
しのぶは最近柱になった。毒の開発を専門とするしのぶだが、元々薬学が得意だったためすぐに琴音と打ち解けて共に研究を始めた。
今日も琴音は昼前には屋敷に来ていたのに、気がついたらすっかり夜になっていた。
「かさばるけど、液体にしようかな。有効成分だけ抽出して瓶に詰める」
「一番確実かもしれません。私の毒も液状のものが一番効果を発揮します」
「また考えてみる。意見ありがとね、しのぶちゃん」
琴音はにこりと笑う。
年はしのぶの方が一つ上だが、二人はとても仲がいい。毒と薬は表裏一体。多忙な生活の中、二人は定期的に意見を交わし合っていた。
お茶でも飲んで一息つきましょうか、としのぶが言った時、窓から鴉が飛び込んできた。
「琴音、南西デ隊士ガ交戦中!苦戦ニヨリ、至急救援ニ向カエ!!」
「わかった!しのぶちゃん、またね!」
「琴音、気をつけて」
「うん!!」
柱ではないが、琴音も甲。緊急指令も多く、忙しい。慌ただしく彼女は蝶屋敷を飛び出していった。