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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第39章 未来へ繋ぐ


戦いが終わってから、明らかに義勇は変わった。
雰囲気が穏やかになり、こんなにもわかりやすく笑顔と愛を向けてくれる。


きっとこれが本来の彼なのだと琴音は思う。
両親は早くに死んでしまったが、優しい姉に育てられ、沢山の愛をその身にもらってきた義勇。

そこに、琴音の兄や錆兎、鱗滝などの敬愛する者たちが義勇に更なる愛を与えた。

それ故、義勇は甘えん坊だし、我儘なところもある。口数が足りないのも、自分が言葉を紡がなくても周りが理解して全部やってくれていたのだろう。戦いがなかったら、おっとりとした少年に成長したと思われる。
まさに末っ子の図だ。


でも、琴音はそんな義勇が大好きだ。

散らばった髪の片付けを終えると、縁側で後ろから彼に抱きついた。両手をぎゅっと義勇の首元に回す。


くっついている部分が温かい。


「私は髪、伸ばそうかな」
「そうだな」
「義勇さんは長いほうが好き?短いと楽なんだけど」
「長いほうがいい。それに……」
「ん?」
「祝言までに、伸ばさないと」
「そっか……ふふ、そうだね」

二人はくすくすと笑う。

「祝言に関しては、他にも問題がある」
「なに?」
「お前、夫婦盃出来るか?三三九度。酒だぞ」
「あ……、どうしよう。困ったな」

未来の話をすると、なんだか胸がドキドキする。自分たちには先があるのだと実感をした。

「近いうちに墓参りをして両家に報告して、それぞれの育手にも報告しよう」
「はい」

未来は短いのかもしれない。
それでも、その中で精一杯幸せに生きよう。

「ねえ。結婚したら私、義勇さんのこと『旦那様』って呼ぶね」
「……そんなことしなくていい」
「えー!呼びたい!」
「よせ」
「なんでぇ?」
「…………照れくさい」
「ぷぷっ!照れないでくださいな、旦那様」

義勇が頬を染めて顔を背ける。
面白がって覗き込む琴音。

雰囲気の変わった義勇が、とにかく可愛くて仕方ない。


「旦那様、私は幸せです」


義勇の首に回している腕に、力を込める。



 この命が尽きる時も同じことを言いたい

 愛するあなたの隣で……
 とびきりの笑顔で……


義勇も恥ずかしそうにしながら、左手を琴音の腕に添えた。


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