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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第39章 未来へ繋ぐ


義勇は赤い小瓶を棚に置いた。

「これを使うつもりはない」
「………うん」
「俺たちには不要だ」
「そうね」

「お前は酒を少量飲ませれば事足りる」
「あ、そういう意味?!愛があるから、とかじゃないのっ!?……というか、あの醜態は忘れてくださいぃぃ!!」

琴音が顔を真っ赤にした。
義勇はそんな彼女を見ながら、目を細めて穏やかに笑う。


「琴音、頼みがある」
「何?」

「髪を切ってくれないか」

義勇は棚へ行ったついでに鋏を持ってきた。

「え、私が?切るなら散髪屋さんに行った方がいいんじゃない?」
「お前に切ってもらいたいんだ」
「変な頭になっちゃったらどうしよう」
「………特にこだわりもないが、お手柔らかに頼む」

義勇と琴音は縁側へ行った。
下に布を敷き、義勇が座る。

「どのくらいにするの?」
「短く」
「炭治郎くんくらい?」
「そうだな」
「癖っ毛だからなぁ、はねちゃうかもよ」

琴音が義勇の髪を触りながら、新たな髪型を考える。義勇の髪を首元で縛っている紐を、少し下にくくっと下ろした。

「じゃあ、とりあえずざっくりいかせてもらいます」
「ああ」

義勇の頭の後ろ、縛られた紐の少し上で鋏の入る音が聞こえた。シャキシャキと髪が切られていく感触。シャキンッ…と音がして、毛束が己から離れた。迷いのない琴音の、潔いほどの断髪だった。
頭が軽くなり、首元に冬の冷気を感じる。

「はい」

もっさりとした毛束を渡される。
手の上に乗せて客観的に見てみると、だいぶ長かったのだなと思う。別に意図的に伸ばしていたわけではない。放置をしていたら勝手に伸びただけだ。最後に切ったのはいつだっただろう……


「整えていくからねー」

琴音の声がする。何やら弾んだ声だ。

義勇の襟元に布を差し込んで着物の中に毛が入らないようにして、真っ直ぐになってしまった襟足に長さの差を付けていく。

鼻歌交じりだ。
どうやら散髪を楽しんでいるようだ。


髪を触られる心地良さに、義勇は目を閉じた。


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