第39章 未来へ繋ぐ
「琴音」
「……わかってるよ。義勇さんが欲しがったんじゃないって」
「押し付けられたんだ」
「だろうと思った。宇髄さんならやりかねないよね」
「わかっていたのなら、なぜあんなに怒った」
「びっくりしたの」
「……そうか」
琴音は少し頬を赤らめていた。
「あと……」
「なんだ?」
「……………」
「??」
「ま、満足…出来てないのかなって……思って」
「……は?」
ぽかんとする義勇。目を丸くする。
帯を結び終わった琴音は、座ったままくるりと義勇に背を向けた。
「えっと……私、恥ずかしくっていろんなことやれないから。義勇さん、本当は満足出来てなくて、ああいうの使いたいのかなって……」
背を向けている為琴音の顔は見られないが、耳が赤いのはわかった。情事を思い起こさせる話をされて、義勇の欲が飛び跳ね、背中がゾクリとした。
「そんなわけないだろう」
「…………」
「お前はいつでも魅力的だし、俺はいつも満足しきっている」
背を向けている琴音の後ろから、彼女にそっと抱きついた。
「だが、……そうだな。今後は俺がお前を満足させられるかわからない」
「え」
「隻腕だから」
「そ、そんなことないでしょ。それは大丈夫だよ」
「わからないだろう」
琴音の首元に回していた義勇の左手が、怪しい動きをし始めた。
「ちょ、ちょっと!義勇さんっ」
「試してみるか」
「やだっ!まだお昼だよ!!」
琴音はバタバタと暴れる。
義勇は少し笑っていた。
平和を実感した。
今まで義勇は、夢中でまぐわっている最中でさえ、どこか神経を張っていた。もちろん熟睡なんて出来ないし、常にぴりぴりとしていた。
「夜ならいいんだな。楽しみにしている。蝶屋敷では出来なかったから」
義勇は琴音を後ろから抱えながら、耳元に口付けを落とした。
もし、愛の営みを繰り返すことで子宝を授かることが出来たなら、二人で大切に育てよう。
少しでも長く一緒に生きられるように、精一杯頑張ろう。
そしてその宝物を、ありったけの愛で包み込もう。
「……可愛いだろうな」
「え?何が?」
「いや」
首を傾げる琴音。
義勇は目を閉じて、未来を思い浮かべて微笑んでいた。