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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第38章 春を待つ


「冨岡、いいことを教えてやる」
「?」
「お前が死んでも琴音が後を追わないようにする方法だ」
「なんだ」
「ガキを作れ」

義勇が顔をしかめる。

「……そんなこと、出来るわけないだろう」
「何でだよ」
「琴音とて、どうなるかわからないんだ。遺された子どもはどうなる」
「だからお前ら二人、死ぬ気で長生きするんだろうが。痣に負けるな。克服してみせろ」
「…………」
「まあもし二人とも死んじまったら、俺が引き取ってやるから」
「………しかし」
「お前のガキは地味そうだがな。不自由なく育ててやるよ。安心しな」

義勇は複雑そうな表情を浮かべた。そんなことになってもいいのか、判断が出来ない。

「だがな、鬼殺隊の女子は相当に身体に無理をさせてきている。ガキを作れるかはわからない」
「…………」
「俺の嫁も、そうだ。だから体を整える薬を貰いに来た」
「そうか」

義勇は結婚は考えていたが、その先はゆっくり二人で過ごそうとしか思っていなかった。

以前は子どもが出来たら…などと思ったこともあったが、早死が濃厚となった今、そんな無責任なことは出来ない。出来るわけがないと思っていた。


「俺は繋ぐぞ、未来へ」
「…………」
「つっても、ガキは授かりもんだからな。作ろうと思って出来るもんでもないがな」
「……そうだな」

「そうだ、これやるよ」
「なんだ?」
「特製の媚薬だ。とんでもない効き目だから気をつけろよ。あいつは沢山の薬を持っているが、これ系のものは持ってないだろうからな」
「……いらん」
「ははは。一口以上飲ませんなよ!」

盛大に顔をしかめる義勇の懐に、赤い小瓶を無理やり突っ飲む宇髄。

突き返そうとしたところに琴音が戻ってきてしまい、義勇はさっと薬を隠した。

彼女は大きめの包を宇髄に差し出した。

「はい、宇髄さん、これ」
「ありがとな」
「詳しい処方は中の紙に書いてあります。とりあえず二ヶ月分です。それで様子を見ましょう」
「わかった。感謝するぜ」
「いえいえ。またお家に伺いますので」
「頼む。じゃ、またな」

宇髄は琴音をぎゅっと抱きしめた。

「――…っ!!」

義勇の顔色が変わるが、宇髄はフッと姿を消した。


……あの野郎


額に青筋を立てる義勇。ムスッとしながら琴音へ顔を向けた。

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