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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第38章 春を待つ


戦いから二週間が経った頃。ずっと昏睡状態だった琴音が目を覚ました。

「琴音さん!!」
「…………なほちゃん……私、」
「気が付いて良かったです」

腕には点滴が繋がれていた。
琴音はぽたぽたと落ちる点滴を見ながらぼんやりとする。

「目眩、吐き気など、ありませんか?」
「……くらくらする。あと…左腕がめちゃくちゃ痛い……」
「まだ肩が腫れていますからね。動かしちゃ駄目です」

琴音は視線を点滴からなほへ移した。

「皆は?」
「柱での生存者は、琴音さんと冨岡さん、不死川さんです。あとの方は……」
「そっ…か………」
「不死川さんは十日ほどで殆ど回復して、もう帰宅されました」
「あはは……頑丈だなぁ……」
「冨岡さんはまだ目覚めてません」
「……容態は?」
「回復に転じてはきていますが……まだ、なんとも」
「そっか。……治療ありがとね。引き続きお願いします」
「はい」

義勇は片腕を失っている。
そんな中でかなりの無理をしていた。失血も多かった。おそらくかなりの重症だと思われる。

「炭治郎くんたちは?」
「善逸さんと伊之助さんは目覚められてだいぶ元気になりました。炭治郎さんはまだ安定しません」
「生きてはいるのね」
「はい」

とりあえずホッとした。


しかし。

しのぶ、甘露寺、無一郎、悲鳴嶼、伊黒の死を突き付けられて、心にぽっかりと大きな穴が空いた気がした。

涙腺が緩む。
琴音はなほに涙を見られないようにぐっと堪えた。


「私はもう大丈夫。ありがとう、なほちゃん」

そう声をかけると、布団を深めに被った。なほも琴音の心中を想って「また後ほど来ますね」と声をかけて病室を出ていった。



「……っ、……くっ、…ひっく……っ、ううっ……うっく……」


琴音は布団を被って、声を殺して泣く。
あまりにも悲しすぎる。
一人で流す涙は、誰にも拭かれることなく溢れ続けた。


少しすると、泣き疲れた琴音はまた眠りに付いた。
寝ながらもひっくひっくと子どものようにしゃくりあげている琴音。


戦闘中に我慢し続けた涙は、なかなか止まることはなかった。


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