• テキストサイズ

言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第37章 秘薬


カナヲと合流して、少し会話をした琴音。

話しながら箱を開けて、中身を取り出す。
注射器仕様となっているものを手早く準備をした。


そしてそのまま、暴れまわる炭治郎のところへ武器も持たずに丸腰で突撃していった。


「炭治郎くん!!!」

声をかけて敢えて炭治郎の意識を自分へ向ける。
伊之助に目配せをして、隙をついて禰豆子を炭治郎から離させた。

「頑張れ!負けるな!!君なら勝てる!!」

琴音へ向かって炭治郎の攻撃が伸びる。
それを見守っている義勇は生きた心地がしない。

しかし琴音はここ一番の集中力で炭治郎の攻撃を躱していく。『武芸の基本は体術だ』槇寿郎の訓えに感謝をした。


「グァウ!!」
「炭治郎くん!しっかり!『お兄ちゃん』でしょ!!」
「ガァァァ!!」
「お兄ちゃんは、どんなときも負けないの!」
「グァァアァッ!!」
「最期まで妹を守るのよ!!!」


琴音は自分を抱きしめながら守ってくれた兄を思い出していた。
兄は自分を必死に守り、息絶えた。ずっと自分への愛を与え続けてくれた兄。


だからこそ、今の炭治郎を辛く思う。

人の何倍も優しい心をもつこの少年が、仲間を、愛する妹を傷付けている現状が辛い。


「戻ろう。人間に。禰豆子ちゃんと一緒に家に帰るのよ。私と違って、君はそれが出来るんだから」


琴音は右手に持っていた注射器を口に咥えた。

管を躱す際に体勢を低くし、右手で身体を支えて炭治郎に足払いをかけた。
炭治郎が体勢を崩してぐらりと揺れた。

その隙をついてカナヲが技を使い、炭治郎の背後に回り込んだ。

琴音は正面から炭治郎の懐に潜り込む。
一瞬琴音の姿が消えたので、技を使ったのだとわかる。
頭に巻いた手ぬぐいだけがその場にふわりと残り、姿を現した彼女は既に炭治郎に注射器を当てていた。


二人の女子が炭治郎を挟み込んで、同時に注射を打ち込む。カナヲの胸元から鮮血が飛んだ。



人間戻しの薬を打ち込まれた炭治郎。彼の心臓が、今までと違う動きをした。彼の目から凶悪さが消える。


炭治郎はその場に崩れ落ちた。


/ 419ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp