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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第37章 秘薬


炭治郎は無惨に血を注ぎ込まれて鬼となった。


失った左手を瞬く間に回復させ、炭治郎はその手で隠に向けて鋭い一撃を放った。

それに気付いた義勇は、隠に飛び付いてギリギリのところで攻撃を躱した。考えるより体が先に動いた。一瞬でも遅れていたら隠は即死していただろう。


側にいた隠はまだ、状況がわからずに「え?炭治郎?……なんで?」と立ち尽くしている。
義勇は「離れろーー!!!」と叫びながら駆け寄る。

――間に合わない、殺される!!

そう思った。
義勇とて混乱している。
しかし、これまでの経験から、一瞬の判断の遅れが生死を分けることを知っている。

――炭治郎に人を殺させるものか!!あの優しい炭治郎に!!

義勇が隠を助けようと駆け寄る中、太陽が炭治郎を照らした。

「ギャアァ!!」と叫んで苦しみ始める炭治郎。

義勇は炭治郎の鬼化を確信した。


「惚けるな!!離れろ!!!!」

オロオロとするだけの隠に叫び、義勇は庇うように立つ。
そして、喉から血が出そうなくらいに叫んで皆に呼びかけた。


「動ける者ーーーー!!!武器を取って集まれーーー!!!」


 なんでこんなことに


地獄を目の当たりにしながら義勇は思う。


でもそれと同時に、人生はいつもそうだ、とも思う。

“こうならないで欲しい”と思う方へ流れる。
“こうあって欲しい”と思うことばかり起こればいいのに。うまくいかないことばかりだ。




「炭治郎が鬼にされた!!太陽の下に固定して焼き殺す!!!」


 ああ
 自分は何を言っているんだ


そんなことをどこかで考えている。
でも、こうなってしまった以上、仕方ない。考えている余裕も義勇にはない。


唯一望むことは……



「人を殺す前に、炭治郎を殺せ!!!」



それしかなった。
なんとも残酷で悲しい決断。


義勇は琴音の刀を炭治郎に突き立てた。
辛すぎて涙が出る。

何故こんなことをせねばならないのか。
これまで必死で守ってきた弟弟子を、どうしてこの手で殺さねばならないのか。


炭治郎の鬼の目が義勇を見る。
義勇も泣きながら炭治郎と目を合わせる。


……頼む、このまま誰も殺さずに、炭治郎のままで…死んでくれ………


義勇は日陰に行かすまいと、必死で炭治郎と取っ組み合った。


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