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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第36章 さあ、もうひと踏ん張りだ


義勇は炭治郎を探して歩き回った。
隠が必死に止めて、治療を受けるように言うが「炭治郎は?炭治郎はどこだ」と全く聞かない。

周りではあちらこちらで怪我人たちが治療されていた。
ある者は抱き合って喜び合い、またある者は死にゆく仲間の手を握り、多くの隊士たちが太陽の光の中でそれぞれの時を過ごしていた。


炭治郎を探してキョロキョロとする義勇。

そして薄暗い場所で、座り込んだ一人の少年を見つけた。赤い髪の少年は頭を垂れていた。

彼に寄り添う隠が泣いている。

「息してない…脈がない……炭治郎……」

そんな隠の呟きが義勇の耳へ入ってきた。ヒヤリとしたものが背筋を這った。

義勇に、炭治郎との永久の別れが突きつけられた。


義勇の頭に、炭治郎のお日様のような温かい笑顔が思い浮かぶ。義勇の目から大粒の涙が溢れた。


義勇は、自分が涙を流していることにも気がついていない。泣くことが久しぶりすぎて、目の前の事実が悲しすぎて、感情が思考を突き抜けている。

動かない炭治郎の前にふらふらと歩いていき、力なく座った。まだほんのりと温かい彼の右手に、己の手をそっと重ねた。戦いが終わっても刀を放さない炭治郎に、胸が苦しくなる。

「また、守れなかった。俺は人に守られてばかりだ……」

義勇の涙がぼたぼたと手の上にこぼれ落ちた。

「許してくれ。すまない、禰豆子。すまない……」

肩を落として隠と共に義勇は泣く。
俯いていたため、目の前にいる炭治郎の変化に気が付かなかった。



不意に、炭治郎の右目を覆っていた肉腫がしゅるしゅると消えていった。

そして、炭治郎がゆっくりと両目を開いた。
その目はいつもの愛らしい炭治郎の目ではなく、ギラつき赤く血走っていた。


炭治郎の目は、鬼のものだった―――……


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