第36章 さあ、もうひと踏ん張りだ
「もうひと踏ん張り!頑張るよ!!」
この場において最年長。かつ唯一の柱である琴音。少年たちを鼓舞し、大技を振るう。
「玖ノ型、煉獄!!」
炎が戦場を駆け抜けた。
気絶しそうな程に体は痛いが、歯を食いしばって耐える。
「まだいける!最期まで粘るよ!!」
「はい!」
「うんっ!」
「おうっ!」
少年たちも負けじと技を繋いでいった。
彼らが一瞬でも隙を見せたら逃亡をしようとしている無惨。それがわかっているので、琴音たちは逃すまいと全力で戦う。
しかし皆が限界だ。
炭治郎が最後の力を振り絞ってヒノカミ神楽の連撃を出し、無惨を壁に縫い付けた。
「炭治郎くん!そのまま放さないで!!」
琴音は叫んで駆け寄った。炭治郎を守るために無惨からの攻撃をその身に受けて吹き飛んだ。
次の攻撃は甘露寺が受け止め、不死川も炭治郎へと伸びる管を斬った。それでも諦めない無惨が炭治郎を食おうと牙をむくが、伊黒が間に入って代わりに噛みつかれた。
皆が炭治郎を守る。
なんとしてもここに無惨を繋ぎ止めて陽の光にあてる。
不死川が叫んだ。
「夜明けだ!!このまま踏ん張れェェェ!!」
太陽が昇る。
誰もが待ち望んだ太陽。
この光を見ることなく、何人が死んでいっただろう。
琴音は光に力をもらうかのようにゆっくりと立ち上がった。
希望があれば、人は何度でも立ち上がれる。
条件は揃った。
無惨を倒しに行こう。
意識が朦朧としているが、炭治郎の方へ足を進める。
日の出ともに、瓦礫の中で気絶していた義勇も目が覚める。血を流しながら左肩を押さえ、ふらふらと歩いている琴音を見付けた。
力が入らない身体に鞭打って、義勇も立ち上がる。
状況を把握できないが、琴音の行く先に無惨がいる。義勇も無惨の元へと動き出した。
「あと少し……あと少しなんだ……」
小さく呟きながら琴音は歩く。ゲホッとむせると血を吐いた。内臓を損傷しているのだとわかる。
太陽よ
もっともっと高く昇って、
この世界をあなたの色に照らしてください
温かい光で包み込んで、
悪いやつを消し去ってください
どうか
どうか……