第36章 さあ、もうひと踏ん張りだ
戦場では、逃亡を図った無惨を炭治郎と伊黒が必死にくいとどめていた。
二人が無惨の衝撃派で吹き飛ばされる様子を見ていた琴音。逃がすものかと無惨のところに飛び込んだ。
「伍ノ型、炎虎!!」
周りに人がいないことを確認して、強い技で無惨の管を切って回る。
しかし、無惨も疲弊しているとはいえ手負いの琴音には致命傷を与えられない。
それでも強き心を持って一人立ち向かった。
「伊黒さん!炭治郎くん!しっかり!!」
炭治郎たちに声をかけるが、隙をつかれて弾き飛ばされる琴音。
「……ぐぁっ…!」
壁に叩きつけられて呻いた。
うまく体が動かずに、受け身を取りそこねて肩が外れた。左腕が悲鳴をあげる。
それでも立ち上がって刀を構えた。
「はぁ、はぁ、逃さないよ無惨!」
そしてまた大技を出していく。
片手だが、その分正確な打ち込みを心がける。
力のないお前はそれが何より肝要だと槇寿郎に言われてきたことを思い出した。
「琴音ーーっ!!!」
そう叫びながら、伊之助が現れた。琴音に向かってきていた管を弾く。
「返せよ。手も足も命も全部返せ!それが出来ないなら、百万回死んで償え!!!」
伊之助は、無惨に向かって泣きながら叫んだ。
「琴音ちゃん!!」
善逸も復活して参戦してきた。
あんなに戦うことをいやがっていた善逸が、こんなにも立派に命をかけて戦っている。
「炭治郎!生きることだけ考えろ!生まれ育った家に帰るんだ!!」
そう叫んで炭治郎を鼓舞した。
「琴音ちゃん、腕……」
「うん。肩外れた」
「入れる!こっち来て!」
善逸は伊之助が戦っている間に琴音の脱臼を治した。
「……っぐぅ…、ありがと」
「うん」
すぐには動かせないが、ただぶらんとしているだけになっていた腕が一応肩にくっついた。
三人で無惨を足止めする。
先に戦場へ向かったはずの義勇の姿がないことが気になったが、探している余裕もない。おそらく攻撃を受けてどこかで倒れているのだろう。
そこへ瀕死だった炭治郎が復活し、四人での攻撃になった。四人とも今にも倒れそうなほどにボロボロだったが、代わる代わる技を出して繋いでいった。