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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第36章 さあ、もうひと踏ん張りだ


琴音は善逸や伊之助の治療をしていく。
血清投与を村田に任せて、止血を中心に手早く行った。

善逸の右足は折れかけていた。雷を使う以上これは仕方無いとも思った。手近にあった木材を添え木として脚絆の下に縛り付けてやる。

伊之助は胸元から血を出していた。童磨との戦いで負った傷が開いたようだ。気を失っているのでそのまま縫っていく。


「お前は大丈夫なのか、夜月」

テキパキと治療をしている琴音に、心配顔の村田が問いかけた。琴音の手が一瞬止まった。

「何が?」
「何って……怪我の具合とか……、あと……」

村田は口をつぐんだ。
自分から聞いたくせに、ちゃんと喋らない村田に琴音は無性にイラッとした。

「恋人の腕が吹っ飛んで、大丈夫だと思う?」
「……だよな。悪い」
「大丈夫でも大丈夫じゃなくてもやるしかないでしょ!!止まってらんないんだから!!」

琴音は伊之助の包帯をきゅっと縛りながら叫んだ。

「私は柱よ!冨岡も柱!何が起きても死ぬまで戦うの!それだけ!!」
「ごめん、馬鹿なこと聞いた」

怒鳴られた村田がしゅんとして俯いた。
それを見てハッとする琴音。

「……私こそごめん、村田。苛ついて八つ当たりした」
「いや、俺が悪い」
「違う。心配してくれたのにね。本当ごめん」
「……夜月」
「駄目だな、私」

柱は弱いところを見せてはならない。
それなのに、手が震える。心を落ちつけるように、目を閉じて深呼吸をした。

「ありがとう、村田」
「え?」
「私が本音言える相手なんて、村田と竹内だけだもんね。ある意味冨岡より言いやすいもん。まあ、それでこうして八つ当たりされてんだからたまったもんじゃないね」
「いや。そんなことねぇよ。光栄だ」
「そう?やっぱり持つべきものは同期だわ」

琴音は苦笑いを浮かべた。

「さて、と。あとは任せる」
「ああ」
「さっきのお詫びは、あんみつでいい?」
「おう」
「奢られたいなら死なないでよ」
「お前こそ」

握った拳をコツンと合わせた。

「二人で行くと旦那に怒られそうだな。俺、殺されるかも」
「まあ、じゃあ旦那も連れてくわ」
「あいつ、あんみつなんて食えないだろう」
「ならお茶でも飲ませとこ」

琴音は笑いながら戦場へと走っていった。


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