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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第35章 希望の薬


――…無惨が地上に弾き出されてすぐの頃。

琴音は一人で無惨と戦った後、毒を食らった己の体の状況を自己診断し、数ある薬品の中から有効な薬を選び出した。

それを鴉で愈史郎に伝えて、血清の調合準備を頼んでいた。

炭治郎を治療する愈史郎と合流して薬を作り、猫の茶々丸を借りて義勇たちの所へ向かった。


良かった
役に立てた


柱たちの毒を消し去ることが出来て、琴音は心底ホッとした。これで、ここには居ない甘露寺や炭治郎、その他毒に侵された隊士たちも救うことができる。

この薬が出来なかったら、ここまでの努力が水泡に帰すところだった。


琴音は先代当主と交わした会話を思い出す。もう随分と前のことだ。

『琴音、無惨は狡猾だ。おそらく単純な攻撃などはしてこない。毒か何かを用いて、効率良く私の子ども達を殺しにかかるだろう』
『はい』
『その時、その毒に対する薬が必要になる。そうでなければ、我々は為す術もないまま全滅してしまう』
『はい』
『薬の開発をしておくれ。あの人達と共に』
『かしこまりました』
『琴音に負担をかけてしまって、申し訳なく思う。精製法に関しても、琴音に辛い思いをさせてしまうもしれない』
『いえ、とんでもない。光栄です。必ずや、無惨の毒を消し去る薬を作ってみせます』


琴音は深々と頭を下げた。

自分が薬師として活躍した人の弟子になったのも、その人と祖父が友達だったことも、祖父が西洋医学に詳しかったことも、きっと偶然ではなく必然だったのだ。


全てはこの時の為に。
琴音が血清を作って、無惨の毒に皆が打ち勝つ為だ。

琴音はそう思った。


『琴音。異国語で、“消える”は何ていうのかな?』
『“disappear”で、ございます』
『ディスアピアー……』
『はい』
『無惨の毒をdisappearさせられる薬を作っておくれ。任せたよ……琴音』


自分に与えられた特命は終わった。
成果は上々だろう。

後は、この仲間たち一緒に一秒でも長く無惨をここに居させること。


もう、いつ死んでもいいや
ここからは、暴れるだけだ!!


なんだかホッとした琴音は、口元に笑を浮かべた。


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