第34章 己のすべきこと
愈史郎に頭を乗っ取られた鳴女が無惨を送った先には、義勇と炭治郎が居た。
無惨と邂逅した二人。
怒りで感情が振り切れそうになった。
ミシミシと音を立てて刀を握りしめる炭治郎。義勇も同じように青筋を立てているが「落ち着け」と弟弟子に声をかけた。
「しつこい」
「お前たちは生き残ったのだからそれで充分だろう」
「私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え」
そんなことを言う無惨に、怒りを通り越した炭治郎が、冷ややかな目をした。
あのどこまでも優しい炭治郎が「お前は存在してはいけない生き物だ」と吐き捨てるように言った。
無惨はそんな炭治郎を無視して義勇に目を向けた。
「お前は柱だな。女の柱を食い損ねた。代わりの食事にする」
「女の柱、だと?」
「今頃死んでいるだろうがな」
義勇は目を見開いた。現在、女の柱は琴音と甘露寺の二人だけである。背中に冷や汗が流れた。
そして、無惨との戦いが始まった。
琴音の安否はわからないが、足を止めるわけにはいかない。自分は水柱。隊を支える柱なのだ。
炭治郎を守り、敵を倒す。
そのことのみを考えて死力を尽くさねばならない。それこそが己のすべきことだとわかっている。
でも。
それでも。
……頼む、生きていてくれ……!
義勇はそう願わずにはいられなかった。
無惨の間合いの広さと速さに二人は苦戦する。一瞬でも気を抜いたら即死だとわかった。
対する無惨は平然としている。
炭治郎が片目を潰されて倒れ、そこに攻撃が迫るのを間一髪で義勇が助ける。
炭治郎を抱えたまま走る義勇を、足手まといになるものかと炭治郎が押し除けて攻撃の外へと弾き飛ばす。
二人が奮戦する中、伊黒と甘露寺が飛び込んできて更なる乱戦になった。